2012年12月8日土曜日

プロの心臓マッサージを考える。



BLSコースは床の上に人形を置いて、そこでビデオを見ながら行うのが一般的なコースの形です。

しかし…ここで疑問が出ます。床で行う心臓マッサージとベッド上で行う心臓マッサージは同じ質だろうか??

病院での心肺停止は、多くの場合ベッド上で発生します。
もちろん!!廊下やベッドの他で心停止をする事もありますが…発生頻度はベッドが一番高いと考えます。

ベッド上で心肺蘇生をする時に、問題となってくるのは…ベッドの弾力性の問題とベッドの高さの問題です。

今回はベットの高さの問題を考えて行きます。

床で心臓マッサージをする事と、ベッド上で心臓マッサージをする事の一番の違いは、心臓マッサージする人の姿勢です。

床で心臓マッサージを行う場合は、胸骨の真上の位置に肩の位置を持ってくることが出来来ます。そのため心臓マッサージをする力は腕だけの力ではなく、体重を使い心臓マッサージをする事が出来ます。

しかし…ベッド上で心臓マッサージを行う場合は、胸骨の真上の位置に肩の位置を持ってくることは出来きません。そのため自分の体重は使うことは出来ず、腕の力で心臓マッサージをすることになります。

でわ!! 
実際にどのように心臓マッサージが変化をするかを救急車内で、シュミレーション人形を使用して胸骨の質の実験をした例を紹介したいと思います。
(AHAガイドライン2,005時を行われた実験です。)

基本情報:救命士の大学生 身長170.8±7.0cm

シュミレーション人形の位置:胸骨圧迫位置  床: 22cm  救急車ベッド: 85cm


胸骨圧迫の回数 

床 300.2mm±12.5   救急車のベッド群 300.3mm±15.2  足台314.9mm±13.3

胸骨圧迫の深さ

床 44.8mm±2.4    救急車のベッド群 35.6mm±4.2    足台43.0mm±4.0

胸骨圧迫の成功率

床 95.4mm±4.1    救急車のベッド群 37.7mm±33.2   足台86.7mm±11.6


この結果をみると…ベッド上で胸骨圧迫を行った場合は、胸骨圧迫の深さや、胸骨の圧迫が適正を行われている成功率が極端に低いのが分かります。

そのためベッド上では、胸骨圧迫の質が極端に低い事を意味します。
そのため、足台を使用して、身体の高さを補正する必要があることがわかります。

BLSガイドラインが2010に変更されて、胸骨圧迫の深さが最低でも5cmになりました。


しかも今回の実験者は救命士の大学生であり、身長も170cm前後ですが、看護師の女性の多くは、身長が170cmより低い方がほとんどです。
そのため今回の実験者より看護師の方が力が少ないと考えます。

この実験を2010ガイドラインで看護師がベッド上で心肺蘇生を行った場合の胸骨圧迫の成功率は、より低い結果になるでしょう。


そのため医療機関でのBLSの研修は床でのBLSトレーニングだけではなく。
ベッド上でのトレーニングや足台を使用したトレーニングが必要だと考えます。
その方がより、実践的な心肺蘇生トレーニングが出来ると考えます。


医師や看護師など蘇生に関わる業務の人は、ベッド上であっても質の高い心臓マッサージで出来るように訓練をしなければけないと思います。
場所がどこであっても、質の高い心臓マッサージ提供が出来ることがプロ証でしょう。



また、既存のBLSコースも床ではなく、机を利用して行うことによって、より現場で有効活用が出来るような気がします。


BLSコースはベッド上での心肺蘇生
ハートセイバーは床での心肺蘇生に2015年からは変わるかもしれませんね。
カンガルーBLSは病院内で蘇生研修をも行っていますのでご相談下さい。

By Gotou


 参考文献:救急車内における胸骨圧迫に関する研究 一胸骨圧迫の姿勢が質に及ぼす影響一
安田 康晴ら 日臨救医誌(JJSEM)2012;151377-8

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