2014年10月26日日曜日

BLSプロバイダーコース


 季節は秋。10月26日、恒例のBLSプロバイダーコースin川崎幸病院です!
 今回の受講生は合計7人。事務、コメディカルの参加の多い日となりました(^^♪
 
今回の会場です。
 
インスト前半担当です。緊張で思わず苦笑い。
 
 じっくりとコースの流れをみて・・・
 
 調整をします。
 
 今回の受講生の皆さん。少し緊張した面持ち。
 
 真剣に説明を聞いています。
 
ドラマチックな動画を観て・・・
 
 いざ、胸骨圧迫へ!
 
 ポケットマスクを使うポイントも。

 30:2で吹き込みます。

しっかりと胸があがるよう、吹き込みます。 

胸骨圧迫は体全体を使って。 

皆さん、とてもよい姿勢で行っていました。 

 何度も繰り返し・・・

少し慣れてきた雰囲気。 

BVMの扱いも学びます。 

 これが意外と難しい・・・。

 さまざまな資機材と対峙しつつ。

AEDにも取り掛かります。 

 チームで学び、

チームで覚える。 

 成人と小児のパッドの違いもしっかりと。

交代し、やって学び、見て学ぶ。 

全体の流れも振り返っていきます。 

二人一組、協力した流れも。 

 どんどん、慣れてきました。
 
上腕二頭筋が燃えるぜ(・`д・´)! 

 次は乳児の心肺蘇生法を。
 
うーん、指先は難しい!

愛情をもって接します!
 
そろそろ終盤です。 

胸郭包み込み両拇指圧迫法! 

二人でCPR! 

次は窒息の解除方法。 

 乳児の対応も学んでから・・・

総復習の筆記試験です。
さて、結果は・・・
 
 全員合格! お疲れ様でした。
今回は高得点が多く、一人は満点でした。
(満点の彼はなんと、このあと夜勤へ・・・)
 

 最初はインストラクターも含め緊張ムードでしたが、徐々にほぐれて、笑顔のみえるコースとなりました。
 この経験をぜひとも、それぞれの部署、それぞれの現場で活かしていってもらえたらなぁと思います。


2014年10月23日木曜日

おとぎ話と心肺蘇生法

1、真実の愛のキス
 先日、マレフィセントという映画を観ました。ディズニー版「眠れるの森の美女」をモチーフとした映画です。
 眠れるの森の美女は作者によってさまざまなストーリーがありますが、ディズニー版では「永遠の眠りについてしまったお姫様が王子様の真実のキスによって目覚める」ことで有名です。
 そんなことを考えていると、ふと、これはある意味の心肺蘇生法っぽいなあ、と思いました。
 
 
 そういえば、「白雪姫」でも似たような描写があります。もしかしたら、心肺蘇生法の歴史はかなり古いのかな?
 なんとなく気になり、心肺蘇生法の歴史を調べてみました。


2、アスクレピオスの蘇生法
 
 紀元前に神様にもなった名医がいました。医学の神様「アスクレピオス」です。

 彼はケンタウロス族の賢者「ケイロン」から医学を学び、活躍しました。彼はいろんなところに今でいう病院を作り、様々な病気や外傷を治したといわれています。
 その信仰の内容から恐らく高度な投薬療法、腫瘍の除去などの外科手術、麻酔を使った催眠療法をしていたとされています。

 彼の娘たちの活躍をみると、感染症の予防策である「衛生」も大切な医療のひとつであると彼は恐らく知っていたと考えられます。(ちなみに衛生の大切さが広まったのは、産業革命後の疫病の流行によるものでかなり近年の話です)

 また、彼の神殿で学んだ医者「ガレノス」という人の記録から、精神疾患の治療もしていたと予想されます。
 行われていた精神治療は、情動の不均衡により病んでしまった人(つまり躁状態や鬱状態を繰り返すような精神疾患にかかってしまった人)に対して、歌を作らせたり、運動をさせたりすることで治療する、というものです。

 内科疾患、外科疾患どころか、精神疾患まで治療していたであろう「アスクレピオス」。本当に高度な技術を有していた彼は、もちろん「蘇生術」をも身につけていました

 彼が蘇生した人の代表格は「ヒッポリュトス」という青年。彼は戦車から落ちて馬に轢かれて死んでしまいました。
 思いっきり高エネルギー外傷です。心肺停止の中でも最も蘇生が難しいであろう受傷機転です。

 彼を運んできたのは女神アルテミス。実はアスクレピオスの伯母さんに当たる人です。なんという無茶ぶり。おばさんそりゃないぜ。
 彼は全力を尽くしました。ひとまず外傷の処置を施し、その後に強心剤などの薬剤を使い、最後に「メドゥーサの血液」を使い、なんとか蘇生させることに成功しました。

 その後、アスクレピオスはこの蘇生術のために、神の怒りに触れて殺され、星となりました。
 なんてこったい( ;∀;)


 

3、預言者エリシアの蘇生法
 
 アスクレピオスの蘇生法はとても高度ではあるものの、現在のBLSとは印象が異なります。

 もうちょっとBLSっぽい蘇生法の古いものはないかな? と探したところ、ありました。

 旧約聖書にエリシアさんという人が出てきます。
 おおよそ紀元前9世紀にイスラエルで活躍した預言者だそうで、女性のような名前ではありますが、オッサンです。
 子どもたちに「禿げ頭!やーい禿げ頭!」とバカにされるという項目があることから、まがおうことなくオッサンと思われます。

 このオッサン、もといエリシアさんが行った奇跡に、このようなものがあります。

 ある夫人の子どもが頭痛を訴えて、その後に死んでしまいました。
 エリシアは子どもの目に自分の目、口に口、手に手を重ね、死んでしまった子どもに覆いかぶさり、その体を温めました。その後に部屋をぐるぐる回って、また同じことを繰り返しました。ちなみに七回。
 すると死んでいた子供は驚くことにくしゃみをし、目覚めたのです。



 
 お! まさに心肺蘇生法! 呼気吹き込み法&保温!
 覆いかぶさることで子どもの胸骨が圧迫&解除されているかもなと言うところも含め、なんだか胸骨圧迫風でもあります。

 エリシアさんはその他にも、毒を清めたり、皮膚病を治したりしています。
 エリシアさんは予言者というよりも、科学者や医者のような知識を持っていた賢い人だったのではないかなと思います。アスクレピオスと同じように。

4、中世~近年の心肺蘇生
 とっても昔の心肺蘇生法を歴史を書いたところで、中世~近年はどうだったのか?
 時代が近いこともあり、文献が多い中世~近年。蘇生法、沢山ありました。。。。

①ふいご法
 これは、ふいごを使って口から肺に直接空気を送り込む方法です。
 バックバルグマスクや呼吸器の強制換気と同じ仕組みですね!
 結構現代的なこの方法は、1500年代からおよそ300年間つかわれていました。
 しかし、残念ながら1800年代に動物実験で肺の過膨張による死亡の危険性が示され、この方法は廃れました。

②燻製法
 燻製法? なんじゃそらと思われるかと思います。名前だけでは想像つきにくいこの方法ですが、驚くなかれ、とってもトリッキーです。
 お尻からタバコの煙を入れる、という蘇生術です。1700年に行われていました。
 煙草の成分が腸から吸収されて、何らかの効果があったのでしょうか。この方法は、煙草の有害性が示され、廃れてしまいました。
 驚きのこの燻製法ですが、ふいご法が廃れて、バックバルグマスクの祖として再び復活したことを考えると、突き詰めていけば実はある程度は効果のある方法なのかもしれません。末梢血管から点滴が取れない時に腸から薬剤を吸収させる、とか?(でもそれだと口腔粘膜でも良いのか・・・うーん)。

③温熱法・むち打ち法
 体を温める、という方法です。温めた灰や熱湯をかける、というような方法をとったようです。これも廃れました。
 むち打ち法という方法もありました。名前の通り、鞭で打って刺激を与え蘇生を目指す方法です。いわゆる「痛み刺激」なので、これも心肺停止では効力がなかったのでしょう(逆に外傷が増えてしまうし・・・)。廃れました。

④逆さづり法
 主に溺死に近い人に用いられた方法で、引き上げで呼気、下げて吸気を補助していました(が、想像してみて・・・よく分かりません(;´∀`))。
 逆さづりによって、水の誤嚥が改善し、血流を重要臓器に集中させることが出来ていたのかな、とも思いますが・・・。この方法は、意外に思われるかと思います。
 ・・・かなり蘇生率を上げました!

 
 体を温めたり、誤嚥した水を取り除いたり、ふいご法やマウストゥマウスなどの呼気吹き込み、むち打ちによる痛み刺激などの他の蘇生法と組み合わせ救急救命の前身となるような組織の作成にもつながりました。

⑤乗馬法・樽法・布締法
 1800年頃には、胸を押したり引いたりするとなんだか良いらしいぞ、ということが分かってきました。
 
 以下のやる気のないイラストをご覧ください。
乗馬法は、右上のように馬の上に傷病者をうつぶせにのせて、馬をパッパカ走らせる方法です。
 樽法は左上のように、樽の上に人を乗せて、足を引っ張ったり押したりして樽の上で転がす方法です。
 そして布締法は胸に布を巻いて、両端から二人で引いたり、ゆるめたりする方法です。

 すべて、胸骨圧迫とその解除を目指しています。方法はさておき、概念はかなり近代的であることが分かります。
 特に布締法はオートパルス人工蘇生システムとほとんど同じ原理です(ベルトで絞めたり解除したりして胸骨圧迫するアレ)。


オートパルスの使用動画


 なんだかとっても近代的!

 心肺蘇生の歴史、いかがだったでしょうか。

 今回、心肺蘇生法の歴史を調べてみて、長い歴史の中で色んな蘇生法が連綿と続いて、廃れたり、復活したりを繰り返し、今の心肺蘇生法があるんだなあと思いました。しみじみ。

 今回はだいぶ長くなってしまったので、今日の胸骨圧迫がどう進化したか、除細動はいつから生まれたのか、といった現代の歴史まではちょっと書くことが出来ませんでいた。機会があれば、書きたいなあと思います。


参考:
心肺蘇生法の歴史
AEDに関する商品情報
http://ja.wikipedia.org/wiki/